臨床動作法 Clinical DOHSA-HOU
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障害児の発達援助技法としての動作法
九州大学大学院人間環境学研究院 針塚 進
(1)動作と運動
 動作は、身体運動として表現される主体の意志(意図)に基づく心理的・身体的活動の総体。成瀬(1985)は、人間が意図(意思)に基づき、その意図を実現化するために努力を行い、その結果が身体運動となって実現する一連の過程を「動作」と概念化している。
(2)動作法とは
 動作法は、脳性マヒ児の動作不自由の改善を目的として開発されてきた動作訓練を他の障害児に適用する場合の方法と理論を指している。すなわち、具体的な特定の動作を課題として与え、それを適切に遂行するよう子どもに努力させる、その特定の動作の制御によって子どもの障害の特徴が変化するよう子どもの自己制御を促す援助法である。
(3)動作法の特性
 @ 障害児との関わりが動作であるため、コミュニケーション手段として言語より直接的であり、子どもにとって明確である。
 A 子どもの反応も動作であるから子どもの心理過程と身体過程の状態が直接的に理解できる。
 B 動作は能動的な活動であるから子どもの能動性を活性化できる。
(4)動作法の過程
 @ 「対人交流(コミュニケーション)過程」
 動作法では、動作を課題とすることから子どもの身体と援助者の身体とを媒介にした対人的交流が第1の過程である。すなわち、援助者と子どもとが身体を媒介にして出会い、子どもが援助者との二人だけの場面におかれた時に両者がどうのようにかかわり合うかが問題となる。

<動作課題の設定> 援助者が障害児の状態や特徴を判断し、適切な課題となる動作を設定して、その課題をもって子どもに働きか ける。

<共通課題化と体験の共有化> 子どもが援助者によって提供される課題を受けとめ、その課題に取り組みながら援助者の要請や意図 に気づき、それを受け入れ、自分の課題としてTh.と共に課題を遂行することにより、課題が援助者と子どもとの共通課題となる。この共通課題化を通してTh.と子どもに体験の共有化が生じる。
 A 動作法の「動作制御過程」
 動作課題の遂行を通して適切な動作制御を行う。

<動作の修正> 従来からの子どもの動作の不適切な側面に焦点を当て不適切性を修正するように働きかける。

<適切動作の習得> 従来の動作の修正と同時に適切な動作を習得するよう援助する。この「対人交流過程」と「動作制御過程」とは動作法の中では同 時的に行われるものである。

動作不自由児に対する動作法
1 タテ系動作訓練の考え方
(1) タテになることの意義
 @ 重力に対応して自らの姿勢をつくる
    ・極度の心身の「緊張」と「弛緩」の体験
    ・外界に対する現実体験
    ・「ヨコ」世界(受動的な世界)のから「タテ」世界(能動的な世界)への体験
 A 生活体験世界の拡大:視空間・行動空間の拡大
(2) タテ系訓練への展開
 @ 主動感への焦点化:動作の安定化、身体的変化、対人行動の変化
 A 適切動作への焦点化:リラクセイションから正動作の重視への視点の転換
 B トレーナー中心からトレーニー中心の訓練
 C  障害の重度化・重複化への対応
(3) タテ系訓練の原理
 @ タテ(直)の姿勢: 姿勢づくり
 A 主動への援助: 自動感から主動感への転換、新しい努力の仕方の体験
 B 分節づくり
 C バランスとり(重心移動・踏みしめ)
(4) タテ系訓練課題
 @ 坐位訓練
a. 坐位の形をとらせる: 脚はあぐら坐りにして上体を安定させるようにし、上体は腰から頭までが一直線になるようにする。
b.  タテに力を入れさせる: 屈や反の力を抑え、直の力にする。
c.  腰を折る(分節づくり): 上体を直にしたまま腰だけを折る。
d.  前後左右のバランスとり: バランスを崩しても踏む張れるように前後左右にわずかに上体を倒す。
 A 膝立ち訓練(片膝立ち)
a. 膝立ちの形をとらせる: 膝から上体が真っ直ぐになるよう股を伸ばしておく。
b. タテに力を入れさせる: 肩から下方にわずかに力をくわえる。
c. 前後左右のバランスとり: 上体を直にしたまま重心を移動させ、膝で踏みしめさせる。
 B 立位訓練
a. 立位の形をとらせる:足の位置に気をつけて、踵を床に着け膝を伸ばして腰・背中を一直線にする。
b. タテに力を入れさせる
c. 股・膝・足首の屈げ、伸ばし、踏みしめ(分節づくり):上体を真っ直ぐにしたまま、踵を床に着けひざの屈げ伸ばしをする。
d. 前後左右のバランスとり: 上体が前後左右に傾かないようにしながら、重心をいどうさせる。その時足の裏全体で踏みしめさせるようにする。
 C 歩行訓練 
a. 片足にしかりと重心を移し、踏みしめる。
b. 他方の足を小幅で踏み出す。
上記の訓練は、<坐位>→←<膝立ち>→←<立位>→←<歩行>のように行われる。
2. 動作訓練の再考
(1)「リラクセイション」の意義
(2)「単位動作」の意義
(3)上下肢「協応動作」の意義
自閉性障害児・多動児に対する動作法
1 自閉性障害児の特徴と問題性
1) 対人関係の問題性:
他者への能動的関心や他者の意図や感情を察知するという他者への能動的姿勢の乏しさ。
2) 自己(身体)確立の問題性:
あたかも自己の身体的存在を確認するかのような自傷・固執行動または儀式的な同一性保持行動。
3) 情動表出の問題性: 
あたかも感情が平板化したような表情の表出の乏しさ、または苦痛や不快な状態にあると考えられる場面での笑いなどの不適切な表出行動。
4) 動作の問題性:
協応動作の困難性、随伴運動・随伴緊張の発現、過度の筋緊張(頚、肩、腰、股関節、脚、足首)から生じる不適切姿勢。
2 自閉性障害児への動作法適用の意義
1) 動作法場面状況の特徴
 @ 身体と身体を通しての1対1の対人場面 関係形成
 A コミュニケーション過程における課題の明確性 共通課題化
 B 課題遂行を通した「動作体験」
2) 動作法における動作課題の意義
 @ 身体の動きや身体の在り方についての「気づき」
 A 受動的な動きから主動的な動きへの変容 ・受動的な関わりから能動的な関わりへの変容
 B 動作及び姿勢の不適切性の改善
3 動作法の適用技法
1) 動作課題
 a. 課題の明確性・直接性の視点
 b. 対応の自由性の視点
@ 躯幹部の弛緩課題「躯幹のひねり」
A 頚・肩の弛緩課題(坐位)
B 躯幹部の反らせ動作課題(坐位)
C 肩の上げ下げ動作課題(坐位)
D 腕の上げ下げ動作課題(仰臥)
E 脚の屈伸動作課題
F 膝立ち・前後左右止め課題
G 立位・脚の屈伸動作課題
H 引き合い動作課題(ギッコン・バッタン)
2) 動作法の進行と展開
@ 訓練場面の受け入れ(Th.の受け入れ)
A 課題の受け入れ
B 課題の遂行
C 課題遂行の能動化(主動化)
3) 動作法適用の留意点
@ 訓練場面及び訓練課題導入時の抵抗の処理…子どもは、Th.を見ている。
A 課題遂行に向けた明確なTh.の合図と一緒に課題を行う気持ち
B 子どもの身体の動きを通した気持ちの表現への敏感性
C 訓練時間
D 動作課題の選択課題性…子どもにとって容易すぎる課題ではないこと
Copyright 2006 The Institute of Psychological Rehabilitation